『スカーレット』

(※これは(勝手に)ART-SCHOOLSPITZGRAPEVINEの楽曲を全曲解説していく途上で遺跡となってしまっていたBlog「Self Service」の移植記事です。移植日:18/6/22 オリジナルのポスト日は投稿日時参照)

 

リードギターとベースに新メンバーを迎え、始動した第二期ART-SCHOOLのデビューmini album。


【特徴】
・第二期に以降すると同時に、レコード会社の契約が終了。

・自主生産限定盤であり現在は入手困難。
・後に『Missing』というコンピレーション・アルバムに、全曲収録されています。
・当時の自主制作のレーベル名はVery Ape RecordsでNIRVANA「Very Ape」から。
・良くも悪くも、第一期とは違う質感で従来のファンから賛否両論を巻き起こす結果となった(個人的にはこの辺りからちょうど聴き始めたこともあり当初は特に違和感は感じませんでした)。

2004年8月リリース。

スカーレット

スカーレット

 

 

1.スカーレット
タイトルはSpitzスカーレット」からか。
木下氏もマサムネ氏同様に、この言葉の隠語的用法が気に入ったので使ったのだろうか。
サビのリードギターは若干「SKIRT」を思わせる。
第二期ART-SCHOOL幕開けを象徴する曲で、今でもARTの代表曲の一つ。ばりばりのシングルコイルの音を前面に押し出したジャキッとしたギターで始まるイントロは、良くも悪くも第一期の雰囲気とはまるで違う開けていく感覚がある。歌詞も今までよりもエロティシズムが全開になっている。アウトロのtoddyのオクターブギターが良い味を出している。
PVはMarilyn Manson「Anti Christ Supersutar」のように壇上から木下が絶唱するもの。他のメンバーはロボット動きで演奏、特にtoddyが良い味を出している。


2.RAIN SONG
第二期のメンバーで始めて制作されたのが、この曲。
軽快なドラムフレーズから始まるこの曲も、また第一期には無かったゆったりした雰囲気をたたえている。
歌詞を見ると、やはり何よりも<<それより何か肉食いてぇな>>が衝撃的。
また「冷めちゃって」の表記が<<冷めちぁって>>となっているのは中原中也の影響だろうか。
この歌詞から出待ちでファンから肉をプレゼントされたというエピソードも。肉食系男子、木下氏の嘆息だろうか。


3.クロエ
タイトルはボリス・ヴィアン『日々の泡』を原案に撮られた邦画『クロエ』より。
第二期以降のARTの新機軸であるアシッド感のあるファンキーな方面の実験的な作品。
今までのARTにはなかった、横ノリな曲調も相まって露骨に肉体的でエロティックな歌詞がより如実にリアリティをもって響く。
ライブでもよく演る曲で歌詞が「家にいんの、一歩も出ないで」を「家にいんの、ヤりたいだけだろ?」とさらに露骨な表現で歌うような時もあった。


4.TARANTULA
サビのメロディが完全にJoan Osborne「One Of Us」。
タイトルは、歌詞通り、当時の木下のガールフレンドが実際にしていた刺青の柄がタランチュラだったことから(ROCKIN'ON JAPAN誌より)。
前曲に続いて肉体的な歌で、歌詞は明らかなセックスソング。


5.1995
タイトルは「1965」の使いまわしだろうか。
第二期になって戸高氏がもたらした大きな要素の一つに、ポストロック的な雰囲気をもったまま、どポップな曲をつくるようになったことが挙げられるが、この曲は早くもその最たるところだ。
白昼夢の後のような澄み渡っていくようなクリーンなギターに、可愛らしい曲調でSpitzのようにポップ。
歌詞は、身体の描写以外は第一期に近いものがあり喪失をテーマにしたもの。
<<約束したあのバスに乗って>>は、どことなく村上春樹氏の短編「めくらやなぎと眠る女」を思わせる。


6.APART
タイトルはSpitzアパート」からか。
典型的な激しいロックサウンドの曲で、歌詞は再びエロティシズムに戻っている。
基本的にリフ一発で突っ走る曲調の割に、「車輪の下」や「UNDER MY SKIN」みたいな、ある種の単調さは感じない。戸高氏のギターがもたらした広がりが感じられる。
<<憧れていたんだ>><<傷んだ>>と久しぶりに言葉遊びを使ってるところも。


7.君は僕の物だった
The Policeの質感を意識したという、ミドルテンポで淡々とした曲。
タイトルの「物」扱いは木下氏の非情さを表しているのか…何と言うか無骨で逆に素敵でもある。苦笑
「気づいた? 5キロ痩せたの」のくだりは実際に木下が言われた台詞で印象的だったものをそのまま歌詞に使っている(狂人日記より)。
この曲に限らず第二期ARTは「猿」という表現を何度も多用する傾向にある。