『SWAN SONG』
(※これは(勝手に)ART-SCHOOLやSPITZやGRAPEVINEの楽曲を全曲解説していく途上で遺跡となってしまっていたBlog「Self Service」の移植記事です。移植日:18/6/22 オリジナルのポスト日は投稿日時参照)
現在、廃盤となっているARTの音源の中でも最も人気があるであろう、2バージョンタイプのmini album(一方はシングル)。
【特徴】
・Disc-1、Disc-2となっていますが、別売り限定発売で現在、どちらも廃盤(自分も残念ながらDisc-2しか持っていません)。
・『Requiem For Innocence』とも『LOVE/HATE』とも違う独特な世界観でまだまだ音源化希望の声が強いけれど、レーベルの関係もあり残念ながら恐らく再販は不可能に近いかと思われる。
・この2バージョンの販売方式を考えたのは、東芝EMIのプロデューサー(NUMBER GIRLなどを発掘。Base Ball Bearなども担当)加茂啓太郎氏とのこと。
2003年7月リリース。
- アーティスト: ART-SCHOOL,木下理樹
- 出版社/メーカー: EMIミュージック・ジャパン
- 発売日: 2003/07/30
- メディア: CD
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- アーティスト: ART-SCHOOL,木下理樹
- 出版社/メーカー: EMIミュージック・ジャパン
- 発売日: 2003/07/30
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【Disc-1】
1.LILY
『SWAN SONG』の世界の幕開けとなるのは、暗く重たく儚げなこの曲。
イントロはThe Cure「Pictures Of You」のメロディラインを率直に引用している。
今までのARTとは決定的に違う<<生まれてこない方が良かった>>とまで宣う厭世観が前面に押し出された世界観はドロドロである。
諦念さえ感じさせる大山氏のシャープなギターは、この曲の要である。
2.DRY
第二期の「刺青」などに通じる無機質ながらもリズミカルなドラムから始まり、サビになると激しくも口ずさめるような曲調になっている。今作の中では聴きやすい方だろうか。
Aメロのボーカリゼーションは、「ミーンストリート」のそれを踏襲した淡々としたもの。
<<永遠に少しずつ死んでいく>>は、Flipper's Guitar「世界塔よ永遠に」の間奏部分から。
ラストのブレイク気味のアウトロは「モザイク」の使いまわしで、Superchunk「Animated Airplane Over Germany」のそれからの引用。
3.OUT OF THE BLUE
タイトルは後に「IN THE BLUE」で使いまわされているが、対になった曲調とは、あまり言えないような感じ。
今作の中で最もまとまりがあって、第一期のARTによる典型的な曲調でありながらその魅力をうもれさせない秀作。
サビも口ずさめるようなポップなメロディーラインに<<死んだほうがマシなんて~>>と厭世的なもので、2番は<<君のホクロの場所や匂い、すがって、ただすがって>>と第二期に通じるセクシャルな君の捉え方が面白い。
先述のように、最もまとまりがありアップテンポな曲調もあるので個人的には最もライブでも聴いてみたい曲である(第一期ARTの中でも特に好きでもある)が、残念ながら少なくとも自分ライブでは聴いたことがない…
4.LOVERS
タイトルは後に「LOVERS LOVER」などで使いまわされている。
イントロの印象的なリフは、Pavement「Major Leagues」のサビ部分のギターから。
サビのキャッチーなフレーズは、木下ソロ時代の「RASPBERRY」の使いまわし。
サウンドはシューゲイザーと言うよりは、ドリームポップな感じでBlonde Readheadみたいなサイケデリアも感じられる。
5.SKIRT
後にアルバムにも収録される曲。
今までのアルバムのどん詰まりの厭世観を吹き飛ばすような、爽やかなアコギのポップソング。
サビのリードギターは、雰囲気的に「スカーレット」に使いまわされているように感じる。
シンプルな曲構成ながらキャッチーなリフやそこはかとないセクシャルな感覚(<<君の匂いや指が/激しさ/スカートの色が>>)がウケるのかファンの人気も高く、一時期はライブでアコギで演る事も多かった曲。
6.SWAN SONG
後にベストに収録されることになり、聴かれることも多くなった隠れた名曲。
「車輪の下」のリフを応用したような、変則的なベースラインに落ち着いていながらもポップなクランチギターが炸裂するタイトルトラック。
PVでは双子の美少女がレズビアン的な世界観を醸すアングラなもので、その双子が万引きをするシーンがダーティに歪みつつも静謐(ここでも櫻井氏が相変わらず良いポジションを担っている笑)。
PV内で木下が着ているTシャツはOzzy Osborneのもので、双子の部屋に飾ってあるLPは右上から時計回りに、Tahiti 80『Puzzle』、Teenage Fanclub『Bandwagonesque』、The La's『S/T』、Jesus & Mary Chain『Psychocandy』。
絶望的かつ厭世的なアルバムのラストを飾るこの曲はARTの中でも数少ない希望を歌った歌。
底なしの虚無と厭世のアルバムの最後に、この曲を持ってきたのは、木下流の救いの提示だろうか。
タイトルは後に漫画家、犬上すくね氏が『うぃうぃdays』にて引用。
【Disk-2】
1.SWAN SONG
上記。
2.LILY
上記
3.MEMENT MORI
タイトルはラテン語の警句で「死を想え」という意味。
色々な芸術作品のタイトルで多用されているが、有名なのはやはり藤原新也のインドでの無常観を綴ったフォトエッセイ『メメント・モリ』だろうか。
サビのメロディは「TEENAGE LAST」の使いまわし。
一応、バンドサウンドだがほとんど弾き語りみたいな素朴な曲で歌詞カードがない分、歌詞はARTの中でもかなり悲痛なものになっている。
MARQUEE誌によると木下はこの曲のRec中、(ボロボロの状態のバンドと歌詞がシンクロしたのか)苦しすぎて泣いてしまい、何度か上手く録れなかったらしい。その為か嘆きのようなボーカルになってるのが聴きどころ。